ロスカットされない考え方 ── 600万円を溶かした僕が、維持率をこう決めている

コラム
ランド投資の基礎
その①
2026.08.10

600万円近くあった口座を、3年かけてほとんどゼロまで溶かしました。何度もロスカットされました。
いま、同じ人間が運用している口座の証拠金維持率は2,455%です。ロスカットされるレートを計算したら、ランド円が0.17円になったときでした。
変わったのは腕ではありません。維持率を決める順番を変えただけです。この記事では、その順番と、実際の口座の数字を全部出します。

ロスカットは、一撃では来なかった

先に、いちばん誤解されやすいところから書きます。

わたしがお金を失ったのは、「ある日いきなり大暴落が来て、一発でやられた」からではありません。

最初の一撃はたしかにありました。朝、画面を開いたら維持率が100%を割っていて、ポジションは最大。昼前にすべて決済しました。そこがちょうど底で、昼過ぎには元の水準まで戻っていました。残ったのは数百万円のマイナスと、自己嫌悪だけです。

問題はその後です。わたしは「今までが運が良かっただけだ」と思いながら、それでもランド円は10円くらいのものだと信じて買い続けました。8円を切り、7円を切り、そのたびにロスカットされました。600万円近かった資産は100万円を割りました。最後はトルコリラに全力で買い向かって、あっけなくロスカットされ、残り10万円を切ったところで引退しました。

600万円は、一度で消えたのではありません。
「もう一回」を何度もやって、消えました。

ですから、この記事で書く「ロスカットされない考え方」は、暴落を避ける技術の話ではありません。何度でも間違えられる余白を、口座の中に持っておくという話です。

維持率は、たった2つの数字の割り算

証拠金維持率という言葉は難しそうですが、中身は割り算ひとつです。

証拠金維持率 = 資産評価額 ÷ 取引必要証拠金 × 100

資産評価額は「いま全部決済したら手元に残る金額」、取引必要証拠金は「そのポジションを持つために最低限いる金額」です。SBI FXトレードの個人口座では、必要証拠金は取引金額の4%(最大25倍)と決まっています。

わたしの口座(2026年8月8日時点)で実際に計算してみます。

項目 金額
資産評価額 383,666円
取引必要証拠金 15,624円
証拠金維持率 383,666 ÷ 15,624 × 100 = 2,455%

そしてSBI FXトレードでは、この維持率が50%を下回ると全ポジションが強制決済されます(FX取引の場合。つみたて外貨は30%)。これは会社ごとに違うので、ご自分の使っている会社の数字を必ず確認してください。

ロスカットまでの距離を決めているのは、レバレッジひとつ

ここがいちばん大事なところです。

「いくら下がったらロスカットされるか」は、相場の荒さでも運でもなく、自分がかけたレバレッジだけで決まります。

ランド円を10円ちょうどで買ったとして、レバレッジ別に計算するとこうなります(維持率50%でロスカットされる前提)。

実効レバレッジ ロスカットのレート 10円からの距離
25倍(最大) 9.796円 20.4銭
20倍 9.694円 30.6銭
10倍 9.184円 81.6銭
5倍 8.163円 1円83.7銭
3倍 6.803円 3円19.7銭
2倍 5.102円 4円89.8銭
1倍 0.000円 10円(=ゼロまで)

レバレッジ25倍だと、20.4銭です。ランド円が10円から9.79円になっただけで終わります。今年の7月30日には1日で29銭動いた日がありましたから、その1日で退場する計算になります。

昔のわたしがいたのは、この表のいちばん上でした。「明日はどっちに動くか」を毎日当てにいっていたつもりでしたが、実際にやっていたのは、20銭の幅の中で生き延び続けるゲームです。当たり続けるしかない場所に、自分で立っていました。

いまの口座は、どこでロスカットされるのか

同じ計算を、いまの自分の口座でやります。

項目 数字
預託金残高 387,086円
建玉 4本・40,000通貨(平均9.8693円)
実効レバレッジ 約1.02倍
維持率50%になるレート 0.1705円

0.17円です。いまが9.75円ですから、9円58銭ぶん下がって、はじめてロスカットされます。南アフリカランドが日本円で17銭になる世界がどんな世界なのかは想像もつきませんが、少なくとも相場の上下でそこへ行くことはありません。

ためしに、いまの4本のまま8円まで下がった場合も計算しました。含み損は−74,772円、それでも維持率は2,440%です。7円まで下がっても2,431%。本数を増やさない限り、わたしの口座はほぼ何も起きません

ところが、買い増した瞬間に話が変わる

ここで安心して終われないのが、積み立て型のこわいところです。

わたしのルールには「8円台まで下がったら、もっと買う」という一項があります。では、いまの現値9.7588円から5銭刻みで機械的に買い下がって8円まで行ったらどうなるか。1本=10,000通貨で計算しました。

レート 本数 平均建値 資産評価額 維持率
9.5588 8本 9.7515 371,666円 1,215%
9.1588 16本 9.5427 325,666円 556%
8.7588 24本 9.3397 247,666円 295%
8.3588 32本 9.1382 137,666円 129%
8.1588 36本 9.0377 70,666円 60%
8.1088 37本 9.0126 52,666円 44% ← 強制決済

8.11円で退場です。目的地だった8円台の、入口で終わります。

維持率2,455%という数字を見ていると口座は無敵に思えますが、それはいまの本数での話でしかありません。買い下がりというのは、下がるほど本数が増えて、下がるほど1本あたりの損が膨らむ、二重の仕掛けです。安全な口座は、買い方ひとつで簡単に危険な口座になります。

維持率は「いまの数字」ではなく、
「これから何本買うか」で決まる数字でした。

だから僕は、維持率を逆から決めている

そこで、順番を逆にしました。今日の買いから考えるのではなく、いちばん苦しいところから逆算するやり方です。

📌 わたしが実際にやっている3ステップ
  • ① 先に「どこまで下がる前提か」を決める。わたしの場合は8円ちょうど。ここまでは来る、という前提で設計します。
  • ② そこで維持率50%を割らない本数を計算する。いまの口座なら、8円到達時点で合計34本までなら耐えます(そのとき維持率52.7%)。35本になると43%まで落ちて強制決済です。
  • ③ 34本を、9.75円から8円までの1円75銭に割り振る。34本のうち追加できるのは30本ですから、平均5.9銭に1本まで。これが上限の間隔です。

ここで、さっきの5銭刻みを思い出してください。5.9銭が上限のところに、5銭刻みで買っていたわけです。差はたった0.9銭。それだけで37本目に届いてしまい、8.11円で終わります。

刻み幅を変えるとどうなるかも並べておきます。

買い下がりの間隔 8円までの本数 8円時点の維持率 結果
5銭に1本 39本 9% 途中で退場
10銭に1本 21本 248% 耐える
20銭に1本 12本 634% 耐える
30銭に1本 9本 935% 耐える

わたしがふだん「9円台後半では買い足しの間隔を広めに取る」と書いているのは、慎重な性格だからでも、気分でもありません。この表があるからです。高いところで詰めて買うと、安いところで買う余力が消える。それだけの、算数の話でした。

ロスカットされない口座とは、買える口座のこと

ここまで計算して、自分の中でようやく言葉になったことがあります。

ロスカットを避ける目的は、「強制決済されないこと」ではありません。強制決済されるのは結果であって、本当に困るのはいちばん安いところで買えなくなることです。

レバレッジ5倍の口座は、8.16円でロスカットされます。つまり「8円台で買う」という作戦を、実行する前に失格になります。持っているつもりの作戦が、実は最初から実行不可能だった、ということが起こります。

ロスカットされない口座とは、
安くなったときに、まだ買える口座のことでした。

最後に効いたのは、金額ではなく回数だった

数字の話をしてきましたが、正直に書くと、いちばん効いた変更は計算ではありませんでした。

これ以上、入金しないと決めたことです。

600万円を溶かしたときのわたしは、ロスカットされるたびに入金していました。追証がなかったので借金は免れましたが、免れたのはただの運です。もし追証のある口座だったら、いまこの文章は書けていません。

入金しないと決めると、口座の中のお金は「増えるか減るか」しかなくなります。減ったぶんは、取り返すのではなく、そこから始めるしかない。1000通貨から再開したのは、そういう理由でした。

いまの口座は38万円です。600万円だった頃の16分の1しかありません。でも、いまの口座はゼロ円まで耐えます。あのときの口座は20銭で終わりました。大きさではなく、距離のほうが大事だったということです。

まとめ

📌 この記事の要点
  • 維持率=資産評価額÷取引必要証拠金×100。SBI FXトレードは50%を割ると強制決済(会社ごとに違うので要確認)。
  • ロスカットまでの距離は、レバレッジだけで決まる。25倍なら10円から20.4銭、1倍ならゼロ円まで。
  • いまの維持率は「いまの本数」の数字にすぎない。買い下がる予定があるなら、その予定を入れて計算し直す。
  • だから逆から決める。どこまで下がる前提か →そこで耐えられる本数 →今日の買い方、の順番。
  • 入金しないと決めると、口座の設計が変わる。取り返す前提の口座は、いつか必ず本数が増えすぎる。

この記事の数字は、すべてわたし自身のSBI FXトレードの口座の実数と、そこから計算したものです。相場観でも予想でもありません。ご自分の口座で同じ計算をすると、たぶん一番おどろく数字が出てくるはずです。おすすめの手順は、まず「自分がどこでロスカットされるのか」を1回だけ計算してみることです。

※本記事は筆者個人の運用記録と、それに基づく計算を公開したものです。特定の取引を推奨するものではありません。ロスカット水準・必要証拠金率は各社および各サービスによって異なり、変更される場合があります。必ずご自身の口座の最新のルールをご確認ください。

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